日本には縄文時代から海藻を食べる食文化があります。日常的に海藻を食べる文化を持つ国は世界でも数少なく、特有の食文化とされています。
海外諸国では海藻を食材として活用することがないため、海藻の価値は非常に低いままでした。しかし、日本人の平均寿命が世界でもトップクラスとなり、健康長寿の要因の一つが日本独自の食文化にあることに注目が集まるようになりました。日本食は栄養バランスに優れ健康に有益と考えられるようになり、現在では、世界各地で健康志向の日本食がブームとなっています。また、和食は食材の多様性や健康への工夫が評価され、2013年、ユネスコの世界無形文化遺産にも登録されています。
ますます健康が重要視される時代の流れの中で、海外諸国でも海藻を食材として摂り入れる食文化が浸透しつつあります。アメリカでも海藻が健康食材として注目されるようになり、オレゴン州立大学では、赤い海藻「ダルス」の養殖技術が開発されました。ダルスは将来数百億円規模の産業に育つと予想されています。このような世界における海藻についての考え方、現状などを紹介してまいります。
なぜ、海藻が生体にとって有益な働きをするのか?その要因の一つとして、海藻中に硫酸化多糖(硫酸基を持つ多糖)を含有することが挙げられています。
昆布やモズクなどの褐藻類にはフコイダンとして知られる多糖類が含有されており、これらが持つ生体作用は広く研究され認知されています。緑色の海藻である「緑藻類」ヒトエグサも硫酸化多糖ラムナン硫酸を含有していることが明らかになり、生体機能の研究が進められています。今後も海藻中の硫酸化多糖類の紹介や赤い海藻「ダルス」が多糖類を持っているか、また持っている場合は生体にどのような効果をもたらすかを紹介していきたいと考えています。