日本には多種類の海藻を食べる食文化がある。海藻は伝統食材だが、その海藻の一つにヒトエグサ(アオサ海苔)がある。
アオサ海苔というのは通称で、正式和名はヒトエグサであるが、一般にはアオサ海苔・青のり、もしくは単にアオサとして市販されている場合が多い。
三重県の伊勢・志摩地方では、このヒトエグサ(アオサ海苔)の養殖が盛んで、全国の約6割が三重県で生産される。この地方の環境がヒトエグサ(アオサ海苔)の養殖に適していることもあるが、三重大学水産学部(今の生物資源学部)藻類学研究室の喜田教授らがこのヒトエグサ(アオサ海苔)の養殖方法を開発し、その後三重県水産試験場が中心となって実用化・普及したという歴史的な背景もあり、三重県が生産の中心地となっている。
ヒトエグサ(アオサ海苔)は、味噌汁の具や酢の物の材料として利用できるおいしい海藻であるが、あまり知られていないこともあり、海苔の佃煮として利用されることが多かった。ところが、最近は大手の量販店でもヒトエグサ(アオサ海苔)が置かれるようになり、その味が消費者に広く知られるようになり、食材としての需要が増しつつある。
ヒトエグサ(アオサ海苔)は、食べておいしいだけでなく、健康に効果的な成分が色々と含まれることが明らかとなってきた。こうした成分の一つにラムナン硫酸がある。ラムナン硫酸はヒトエグサ細胞間に含まれラムノースと硫酸化ラムノースを多く含有するポリラムノース多糖類である。ヒトエグサ(アオサ海苔)には、これらが約50%と非常に多く含有されていることが明らかになっており注目を集めている。この分子中に硫酸基が存在するため、硫酸化多糖と呼ばれている。
ラムナン硫酸と類似した物質としてフコイダンがある。フコイダンは昆布やワカメ等に含まれる粘性を持った多糖類である。フコイダンは、フコースを多く含有する多糖であるが、硫酸基を持っているため、ラムナン硫酸と同様の硫酸化多糖に分類される。フコイダンには抗腫瘍作用、抗血液凝固作用など多くの生体調整作用があると報告されている。
ラムナン硫酸は、消化酵素で消化されないため、生体では食物繊維として考えられていたが、フコイダンと同様の硫酸化多糖類のため、生体に有用な機能を持つことが期待される。
近年、この効果を裏付ける研究が進められており、ラムナン硫酸にも多くの生体調整作用があることが明らかになってきた。
ラムナン硫酸は、糖類の一種であるラムノースを90%以上含有している。