ラムナン硫酸の抗血栓作用

背景と目的

日本人の死因として1位にがん、2位に心疾患、3位が脳血管疾患であることが知られています。心疾患と脳血管疾患の多くは血栓症が原因となることが知られていることから血栓症を防ぐことは心疾患や脳血管疾患を予防するために重要です。血栓症は大きく分けて静脈血栓症と動脈血栓症に分けられます。血流の遅い静脈では凝固因子(フィブリンによる凝固)が、一方、血流の速い動脈では血小板が血栓形成に重要な役割を果たすことが知られています。静脈血栓として深部静脈血栓症や肺塞栓など(いわゆるエコノミークラス症候群)が知られ、その治療や予防に主に抗凝固薬が使われます。動脈血栓には心筋梗塞や脳梗塞などが知られており、抗血小板凝集薬が使われます。ラムナン硫酸がどのような血栓形成に対して効果を持つかを明らかにするために血液凝固試験、血小板凝集試験を行いました。

検討方法

ウシ血清に濃度の異なるラムナン硫酸を添加しトロンビン(血液を凝固させる因子)を加えてから凝固するまでの時間を測定しました。比較としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及びへパリン(抗凝固薬)を添加した試料を同時に測定しました。 またトロンビン誘発性血小板凝集におけるラムナン硫酸の影響を検討しました。

結果

ラムナン硫酸は濃度依存的に血液凝固時間を比較対照に比べて延長し、血液凝固を抑制することがわかりました。また、血小板凝集を濃度依存的に抑制し、血小板凝集を抑制する作用を持つことがわかりました。

 

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まとめ

ラムナン硫酸は凝固因子による血液凝固および血小板凝集を抑制することから静脈血栓形成および動脈血栓形成の両方に対して抑制作用を持つと考えられます。

 

(データ:Journal of Natural Medicines, 2019, 73, 614, DOI:10.1007/s11418-019-01289-5, Marine Drugs, 2020, 18(4), 228, DOI:10.3390/md18040228)