ラムナン硫酸の動脈硬化症予防効果

マウスにおけるヒトエグサ由来ラムナン硫酸の動脈硬化症予防効果

背景と目的

海藻Monostroma nitidum(ヒトエグサ)由来ラムナン硫酸 (RS)の摂取が動脈硬化発症に影響を与えるか検討を行いました。実験では高脂肪食を与えたApoE欠損マウスを用いて検討を行っています。

ApoE欠損マウスは、動脈硬化症を発症しやすくしたマウスであり、ヒトのアテローム性動脈硬化症のモデルとして広く用いられております。

実験内容

まず初めにApoE欠損マウス(オス)を通常食 (ND)摂取群と 高脂肪食 (HFD)摂取群の2グループに分けます。それぞれのグループに試験食を 12週間与えた後、群内でRS投与の有無でさらにグループ分けを行い以下の4つのグループに分けました。

  • ND (RS投与無)
  • ND (RS投与有)
  • HFD (RS投与無)
  • HFD (RS投与有)

R.S.経口投与開始から12週目に血液中脂質量として、血中総コレステロール (TCHO) とトリグリセリド (TG) 濃度を測定しました。

さらに動脈中のアテローム性動脈硬化関連遺伝子Mmp-9のmRNA発現量及びさマクロファージ由来細胞RAW264.7の移動性に関して比較検討を行いました。

結果

RSの投与により、HFDを与えたマウスの血中TCHOおよびTGレベルの増加が抑制されました。さらに、大動脈の血管平滑筋細胞(αSMA陽性細胞)の増殖、マクロファージの蓄積、およびVCAM-1の上昇が抑制され、Robo4の減少が抑制されました。加えて、アテローム性動脈硬化症に関与するVcam1、Mmp9、およびSrebp1のmRNAレベルの増加もRSによって抑制されました。また、RSはin vitro の実験においてRAW264.7細胞の遊走を抑制しました。

結論

HFDを与えたApoE欠損マウスにおいて、RSの経口投与は異常な脂質代謝を改善し、血管内皮の炎症と過剰な透過性、マクロファージの浸潤と蓄積、平滑筋細胞の増殖を減少させることが示されました。これらの結果は、RSがアテローム性動脈硬化の予防に効果的な機能性食品であることを示唆しています。

 

各結果の詳細

RSHFDを与えたApoE欠損マウスの脂質プロファイルを改善

 

図1A–C

図1A: RSを投与したHFD群のApoE欠損マウスは、血漿の総コレステロール (TCHO) レベルが有意に低下しました (p < 0.01)。

図1B: 大動脈におけるSrebp1 mRNAレベルは、HFD群で有意に増加しましたが (p < 0.05)、RS投与によりその増加が抑制されました。

図1C: 血漿のトリグリセリド (TG) レベルもRSによって有意に低下しました (p < 0.001)。

解釈: RSは血中コレステロールとトリグリセリドのレベルを効果的に抑制し、脂質プロファイルを改善する可能性があります。特に、Srebp1の抑制はコレステロール生成の抑制に寄与していると考えられます。